2025年7月18日~20日までイタリア・ミラノでワールドカップが始まった。
本大会には、シニア個人74名・団体17か国が出場。日本からは松坂玲奈選手、鈴木菜巴選手、フェアリージャパン団体チームが出場した。
世界選手権の前哨戦として位置づけられる今大会には、各ワールドカップで実績を残す強豪国のメダリストたちが集い、非常に見応えのあるハイレベルな戦いが繰り広げられた。
7月18日【個人総合】1日目
●松坂玲奈 個人総合前半順位:22位
6月のアジア新体操選手権で課題として挙げられた身体難度の精度に対し、この1か月間集中的に取り組んできた。
《ボール》
得点:25.000(DB /DA 6.10/A 6.55/E 4.95) 順位:27位
早朝の本番であったが、身体はしっかりと動き、伸びやかな演技を披露。前半は安定した構成で進行したが、価値の高いポワソンから足でキャッチするリスクで投げが大きくなり、咄嗟に背中打ちに切り替える判断をしたものの落下。2つのDAを省略しながら踊り切ったが、ミスと移動により約2点の減点。悔しさの残る結果となった。
しかし、重点的に取り組んできた身体難度は確実に成果として表れており、大きな収穫のある演技となった。
《フープ》
得点:27.550(DB 8.20/DA 4.00/A 7.65/E 7.70) 順位:10位
日本調の音楽に合わせ、松坂選手ならではの独自の世界観を表現した。難度の高い技に果敢に挑み、音楽と一体となった演技ができた。結果として27.55という得点を獲得し、ブルガリア、イタリア、ウクライナといった新体操強国に近づく点数となり、本人にとっても大きな自信となった。
今後は、リスクの受けにおいて2か所ほど改善の余地があり、得点をさらに伸ばせる可能性がある。世界選手権に向けて28点台の獲得を目指し、引き続き努力を重ねていきたい。
●鈴木菜巴 個人総合前半順位:16位
4月のWCタシュケント大会に続く今季2度目の国際大会。自己評価ではなく、得点として改善を証明することを目標に臨んだ。
《フープ》
得点:26.550(DB 7.30/DA 4.10/A 7.50/E 7.65) 順位:26位
最初の種目となったフープでは、冒頭のステップからバランス難度を丁寧にまとめ、確実に抑えることができた。中盤にかけては、構成変更を行った受けのDAも次々と決まり、安定した序盤を見せた。リスクでは、脚で回しながら受ける構成に挑戦する準備をしていたが、直前のジャンプ着地の乱れにより、咄嗟の判断で従来の構成に戻して対応した。この判断が後に響くことはなく、経験と練習の成果が表れた場面であった。
一部、リスクの受けで加点を取り切れなかった部分もあったが、開幕種目としては十分に良い滑り出しとなった。
《ボール》
得点:26.900(DB 7.20/DA 4.00/A 7.75/E 7.95) 順位:9位
試技直前、システムトラブルが発生し競技が一時中断、再開の見通しが立たない中での難しい対応を強いられた。20分の空白の中でも集中を切らさず、人の動きや空気感を感じ取りながらコンディションを維持し、冷静に再スタートを切った。
リスクの受けにおいては、加点しきれなかった部分もあったが、全体としては終始クリアでのびやかな動きが光り、最後まで活き活きと踊り切った。芸術・実施において今季最高得点をマークしたことは、心の迷いがなく楽しめていた証でもあり、観客の心を惹きつける力に直結した演技となった。
種目別ファイナルまではあと一歩及ばなかったが、世界の舞台で堂々と上位に食い込む内容を見せられたことは、大きな自信と今後の可能性につながる成果である。
●団体
《種目:リボン》出場選手:鈴木歩佳、稲木李菜子、田口久乃、西本愛実、三好初音
得点:22.800(DB 5.20/DA 6.10/A 6.55/E 4.95) 順位:5位
4月のワールドカップ以来、約2か月ぶりの公式戦となったが、大会のない期間にも演技披露の機会を積極的に設けていたことで、落ち着いた試合運びを実現できた。
本番において、交換や連携での大きなミスはなかったものの、距離を必要としないCCやCRでの取り損ねや移動が目立ち、落下後の対応では芸術性・実施面ともに減点が重なった。
整った動きは日本の持ち味であり、他国にない強みでもある。一方で、不要な移動が少ない反面、演技全体が平坦に見えやすく、身体と手具の距離が近いことで迫力や奥行きが不足する傾向がある。このままでは世界と戦う上で物足りなさを感じるため、今一度、動線や動き方を見直し、演技の魅せ方や手具さばきについて改善していく必要がある。そしてミスを防ぐだけでなく、見る者を惹きつける構成を確立していきたい。
また、リボン種目は各国とも完成度に苦戦している状況にある。だからこそ、日本は「確実にやり切る内容」と「安定感」を最優先にし仕上げなければならない。小さな積み重ねが、結果として大きな差を生む。そのためにも、身体のポジションの精度を徹底し、技術と表現力の両面で揺るぎない安定を追求していきたい。
報告者:村田由香里





